まさに「어려워요(オリョウォヨ=難しいです)」
韓国語で「難しい」という、この単語。私はこれが、言えませんでした。
「難しい」という単語自体が難しい。冗談みたいですが、本当の話です。オ、リョ、ウォ……口の中で音が渋滞して、何度言っても、何かが違う。
今日は、発音に自信が持てないまま5年やってきた私が、ようやく整理できた「日本人が韓国語の発音でつまずく本当の場所」の話です。先に言うと、犯人は才能でも耳の良さでもありませんでした。日本語には存在しない区別が、たった2グループある。それだけだったんです。
関門その1:「ん」が3種類ある(ㄴ・ㅁ・ㅇ)
日本語の「ん」は、1種類です。正確には、日本語でも無意識に発音を変えているのですが、文字も意識も「ん」ひとつで済んでいます。
韓国語は、これを3つに書き分けます。
- ㄴ:舌先を上の歯茎につける「ん」(ナ行の入り口)
- ㅁ:唇を閉じる「ん」(マ行の入り口)
- ㅇ:舌も唇もどこにもつけない、喉の奥の「ん」(「あんがい」の「ん」)
たとえば私が今でも自信を持って言えない単語に、공룡(恐竜。つづり通りなら「コンリョン」ですが、発音変化で「コンニョン」のように聞こえます)と엉덩이(オンドンイ=お尻)があります。どちらも「ん」の連続攻撃。日本語の「ん」でごまかすと、韓国語としては別の音、下手をすると別の単語になってしまう。
逆に言うと、聞き分けられない・言い分けられないのは、日本語がこの区別を必要としてこなかったからです。私たちの耳と口は、日本語仕様に最適化されているだけ。欠陥ではありません。
関門その2:「オ」が2種類ある(ㅓ・ㅗ)
もうひとつが、母音の「オ」です。
- ㅗ:唇をすぼめて前に突き出す「オ」(日本語のオに近い)
- ㅓ:口を縦に大きく開けて、喉の奥で出す「オ」(日本語にない)
冒頭の어려워요が言えなかった理由は、ここでした。어(ㅓ)と워(ㅝ)、日本語にない「オ」系の音が連続する。カタカナの「オリョウォヨ」を読んでも、絶対に届かない場所にある単語なんです。
복숭아(ポクスンア=桃)も、私の長年の難敵です。ㅗとㅜとㅇ、すぼめる音と喉の「ん」が混ざる。果物屋で桃を買う日が来たら、たぶん私は指をさすと思います。
「喉でわかった」瞬間の話
ただ、この5年でひとつだけ、確かな前進がありました。
言えなかった어려워요を、あるとき意地になって、何十回も繰り返したことがあります。口の形を変え、喉の開きを変え、Papagoに発音させては聞いて、真似て、また言って。翻訳アプリを、私は会話には使いませんが(5本目の記事)、発音の先生としては、これ以上ない相棒です。何回リクエストしても、嫌な顔ひとつしないので。
すると、あるタイミングで、「あ、ここだ」と喉でわかったんです。
頭でわかったんじゃありません。「ㅓは口を縦に」という知識は、最初から知っていました。そうじゃなくて、正しい音が出るときの喉と口の感覚が、身体側で見つかった。自転車に乗れた瞬間に近い感覚でした。
このとき悟ったのは、発音は知識ではなく、運動だということです。何度読んでも自転車に乗れるようにならないのと同じで、発音の解説を何本見ても、口は動くようになりません。逆に、たった1単語でも身体で見つけた音は、もう忘れない。어려워요は今、私がいちばん自信を持って言える単語のひとつです。「難しい」がいちばん得意って、変な話ですが。
じゃあ、どう練習するか(5年目の整理)
偉そうなメソッドは語れませんが、私の実感ベースで整理します。
①敵は2グループだけ、と知る。 「発音ぜんぶ難しい」と思うと心が折れます。実際は「ん3種(ㄴㅁㅇ)」と「オ2種(ㅓㅗ)」の2グループに、日本人のつまずきの大半が集中しています。まずここだけでいい。
②1単語を、何十回も。 広く浅くリピートするより、어려워요でも안녕하세요でも、1単語を「喉でわかる」まで繰り返す方が、身体に残ります。1単語で見つけた感覚は、他の単語にも流用できます。
③カタカナは、早めに卒業する前提の足場。 正直に言うと、私は今、カタカナ表記を敬遠しています。勉強を続けるうちに、読みづらいうえに、カタカナでは表せない音があまりに多いと気づいたからです。この記事のカナ表記も、初めての人のための足場として置いているだけで、ㅓとㅗの違いは、カナにはどうやっても書けません。出口は必ず「音」。Papagoでもアプリの音声でもいいので、耳から真似る工程を挟んでください。
まとめ:下手なのは、日本語が上手だから
発音に自信がないと、声が小さくなります。声が小さくなると、余計に通じない。私はこの悪循環を5年やってきました。
でも、構造がわかった今は、こう思えます。ㄴㅁㅇが区別できないのも、ㅓㅗが同じに聞こえるのも、日本語のネイティブとして完成された耳と口を持っている証拠です。下手なんじゃなくて、日本語が上手なだけ。そこから2グループぶんだけ、身体を拡張すればいい。
一気には無理でも、1単語ずつなら、喉はちゃんと覚えてくれます。私の어려워요が、その証人です。


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